自分でお酒を作りたい!気を付けることは?【酒税法】【自家製酒】
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ビールにワイン、焼酎に日本酒と、世の中にはたくさんの種類のお酒があります。

「じゃあ何か試しに作ってみよう!」と思う人も少なくないと思います。僕自身もその一人でした。

 

しかし残念なお知らせがあります。

基本的に、自分でお酒を作ることは法律で認められていません!

 

・・・とても辛い。

 

Contents

なぜお酒を作ってはいけないの?

 

自家製のお酒を作ることは【酒税法】に違反します

 

何がいけないのかというと、「課税すべき税がとれない」ということ。

つまり、自家製酒は脱税された「密造酒」になるわけです。

 

「お酒を仕込んだ分、税金を払えばよくね?」と思わないでもないですが、残念ながらそんな仕組みはないです。

そもそも法律上で、酒類の製造には「酒造免許」が必要で、国に認められた機関でしかお酒は作れないというルールもあります。

 

酒造免許は個人でとることは不可能で、会社のような大きな組織でないと取得できません。

さらに申請するときも厳しい審査が必要で、規定以上の量のお酒を生産しなければいけなかったりもします。

例え起業したとしても、酒造免許は決して簡単にとれるものではないのです・・・。

 

なので「ビールを作りたい!日本酒も作りたい!」なんて思っても、無理なものは無理。

 

諦めてください。

 

 

・・・といったものの全部が全部駄目ってわけでもなくて、一部例外もあったりします。

それについては次からの項目で説明していきます!

 

例外その1「梅酒などのリキュール」

 

5~6月くらいになると、スーパーで青梅が売られているのを見たことある人は多いでしょう。

同じ売り場で、ホワイトリカーや氷砂糖も売っていたりして、これを買うだけで簡単に梅酒が作れちゃいます。

 

梅酒などの「蒸留酒に漬け込むリキュール」であれば、自分でお酒を作ることが出来ます!

お酒を作るなら、これが最も現実的で簡単な方法です。

 

実は僕も、梅酒を家で仕込んでいたりします。

作り方の記事はこちらに書いてありますので、参考までにどうぞ。

 

ただ、合法であるとはいえ気を付けるべきこともあります。

説明していきますね。

 

ワインで漬け込むことは出来ない?なぜ蒸留酒だけ?

今回、あえて「蒸留酒で漬け込むリキュールなら大丈夫」と書きました。

しかし正確に言うと「アルコール度数が20%を超えるお酒」なら、どのお酒でも漬け込んでリキュールにすることは可能です。

 

以下、国税庁のサイトの引用です。

焼酎等に梅等を漬けて梅酒等を作る行為は、酒類と他の物品を混和し、その混和後のものが酒類であるため、新たに酒類を製造したものとみなされますが、消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上のもので、かつ、酒税が課税済みのものに限ります。)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。(後略)

 

なので、ワインのような醸造酒でもアルコール度数20%以上を超えれば大丈夫ですし、蒸留酒でも20%を下回るとダメということになります。

 

ただし醸造酒はその製造過程上、アルコール度数が20%を超えることはありません!

ワインや日本酒のような醸造酒は、酵母菌の働きによってアルコールを作るわけですが、その酵母菌自身がアルコール20%以上を超えると死滅するからです。

なので実質、「自家製リキュールに使えるお酒は蒸留酒のみ」ということになります。

あ、20%超えなら同じリキュールでも漬け込むことは可能です。リキュール作りにリキュールを漬け込むことになるので自家製の意味があんまりない気がしますが・・・。

 

もしワインで梅酒を作ったら・・・?
ところで、どうして「リキュールづくりに使えるお酒はアルコール20%以上」と決まっているのでしょうか?
普通にワインに梅を漬け込んでも問題なさそうに感じますよね。その理由は「酵母によるアルコール発酵」にあります。
先ほど、酵母菌はアルコール20%以上で死滅すると書きました。しかし逆に言えば、ワインのような低アルコールのお酒だと酵母菌は生きており、発酵が始まってしまいます。

この時点でリキュールではなくなり、醸造酒となるからNGというわけです。

酵母菌を入れてないから大丈夫じゃないかって?
いえいえ、実は梅などの果物の皮には物凄くいるんですよ。酵母菌は。

更に言ってしまえば、酵母菌はどこにでもいます。
その辺の空気中にも漂ってたりします。

だから、リキュールづくりにはアルコール20%以上でないといけないというルールがあるのです。

 

 

漬け込むことが禁止されている材料も

 

ということで、アルコール20%以上のお酒を使えば何でも漬け込めるわけではありません。

いくつか禁止されている材料もあるので確認していきましょう。

(前略)次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としないこととしています。(中略)

1 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ

2 ぶどう(やまぶどうを含みます。)

3 アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす

 

まず1番目の「米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでん粉又はこれらのこうじ」

そして2番目の「ぶどう」

これらを漬け込むことは禁止されています。

アルコール20%以上のお酒に漬けるので発酵は始まらないはずですが、何故か駄目みたいです。

 

 

これは僕の予測ですが、製造過程が醸造酒と区別がつきにくいことが理由なのではないかと思います。

 

例えば、ワインは潰したブドウを容器に入れて発酵させてつくります。

しかし、潰したブドウを蒸留酒と一緒に容器に入れても、その違いなんて一見では分かりません。

穀物系も然り、日本酒と区別がつきにくいからダメなんでしょう。

 

じゃあブドウ以外の果物はなんで大丈夫なんだというツッコミも入りそうですが、本当なんででしょうね・・・。

ワインの生産者を守るためとも考えられますが、それにしたって違和感を感じます。

 

あと上の引用文によると、3番目の「アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす」も禁止されています。

 

いわゆる食品添加物類ですが、これらも何故か駄目です。

自家製のお酒だと無縁な感じもしますが念のため。

特別気を付けることとしたら、食塩は無機塩類のひとつなので入れちゃダメ!・・・ということぐらいですかね。

 

 

売ったり、誰かにあげるのは大丈夫?

 

せっかく作った自家製酒。

友達に分けてあげたり、あるいはお店で販売したいという人もいるでしょう。

 

しかし、自分で作ったお酒は「自分で消費しなければいけない」という決まりがあります。

 (前略)また、この規定は、消費者が自ら飲むための酒類についての規定であることから、この酒類を販売してはならないこととされています。(後略)

つまり販売するのはNGです。

もちろん相手が家族や友人であってもです。

 

それなら無償で誰かにあげたりするのは大丈夫なのかというと・・・

常識の範囲内であるならば、自家製酒をお裾分けすることは出来ます!

 

例えば家族、友人、職場の同僚といったぐらいなら問題はありません。

ただし、見知らぬ誰かにあげたりするのは「自分で消費する」という定義から外れてしまう可能性があるので止めた方がいいでしょう。

 

また、飲食店などで客にサービスで提供するのも基本的に禁止されてます。気を付けましょう。

ただし、下記の方法をとれば提供可能だったりします。

旅館や飲食店でも自家製酒を提供する方法
基本的に旅館や飲食店で、自家製の梅酒などを提供することは禁じられています。
しかし、酒税法の規定に従って税務署に申告すれば、提供することが可能になります。
説明すると長くなるのでここでは説明しませんが、必要であればこちらの「租税特別措置法(酒税関係)の改正について」 のページをご覧ください。このルールに従えば有償・無償問わず、客に自家製酒を提供することが可能です。
ただし、瓶などの容器に入れて持ち帰れるように販売するのは駄目なので注意。

 

サングリアは違法?

 

ここまでの説明を見たら「あれ?サングリアって作っちゃダメじゃね?」と思う人もいるかもしれません。

サングリアとは、ワインに果実やスパイスなどを入れて一晩寝かしたドリンクで、スペインなどでよく飲まれています。

日本のお洒落なレストランやカフェでも提供してる店は多いですよね。

 

まあお察しの通り、サングリアを作るのは酒税法にバッチリ違反します。

ちょっと昔は客席から見える位置に漬け込んでいる店もあったりしましたが・・・普通に法律違反です。駄目です。

もちろん自分用に作るのもNG!

 

なので現状、日本でサングリアと呼べるものは「酒造免許を取得しているメーカーが作ったもの」、もしくは「輸入されたもの」のみになります。

飲食店のサングリアは、提供直前で市販のサングリアにフルーツ入れただけのものだったりします。

 

かくいう僕も昔働いてたカフェでサングリアを出していたんですが、注文が入ったら「ワインにサングリアシロップとジュースを混ぜて、フルーツを添える」という感じで出していました。

実質はサングリアではなく、「サングリア“風”カクテル」でしたね・・・。

 

余談ですが、カクテルは「消費の直前に混和する」ので酒類の製造にはあたりません。

ただし、「カシオレ作ったけど、飲み切れないから冷蔵庫に入れて明日飲もう!」とかすると、酒類製造になって違法になります。

 

・・・改めて思うけど、酒税法って厳しすぎない?

 

 

例外その2「業者に製造委託する」

 

「自分でお酒を作れないなら、作れる人にお願いすればいいじゃない!」

そんなことできるのか!?と思うかもしれませんが、意外と可能だったりします。

 

要は自動車免許を持ってないから、運転を別の人にお願いするみたいなもの。

そう考えれば、特別変なことでもありません。

 

グーグルで【お酒 製造委託】と検索すれば、やってくれる業者はけっこうあります。

ただし残念ながら、ほとんどが業者向けの内容。個人消費者向けに製造委託をしてる業者はほとんどありません。

 

ですが、交渉次第で製造してくれる業者はあるかもしれません。

調べてみたところ、ビールの場合だと最低でも数百本から製造してくれるところもあるみたい。

これくらいなら(頑張れば)自家消費することは出来るので、お金に余裕があれば業者と相談したうえで挑戦してみるのも悪くないかも。

 

でも正直言ってハードルが高すぎますよね・・・。

なので、メーカー主催の酒造体験に参加することが一番現実的な方法でしょう。

 

こちらも日本酒造りやワイン造りなど、体験会は探せば色々とあります。

時期が限られたりもするものもありますが、一度は調べてみる価値はあるかと思います。

 

その中でも僕が特に気になったのは、木内酒造の「手造りビール工房」です。

「常陸野ネストビール」で有名な木内酒造ですが、ここでは何と自分好みのビールを作れるみたいなんです!

実際にビールを作る前に、ネストビールを試飲しながら(←ここ大事)自分が作りたいビールを担当者さんと相談して決めることが出来るのだとか。

体験会というと、すでに決められたお酒をつくるところが多いので、これは大きなアドバンテージです。

 

更に、実際にビールを造る過程のほとんどを体験することが出来ます。

具体的に言えば、麦芽の粉砕から糖化作業、ろ過、煮沸してホップの添加と、かなりの部分を自分の手でやらせてもらえます。

麦汁の発酵と熟成、瓶詰め作業は木内酒造のスタッフがやってくれるので、体験後は届くのを待つだけ。

 

もし自分でお酒を醸造するとなると、何よりも大事になるのが衛生管理。

仕込み中のお酒が雑菌に汚染したら、ひとたまりもありません。

しかし、ここだとベテランのスタッフが付いてるので、失敗のリスクがないのも大きなメリット。

 

というか色々調べて、僕自身が体験したくなってきた。

今度時間に余裕ができた時にでも、ここの予約をしてみよう。そうしよう。

 

 

例外その3「海外で仕込む」

 

「発酵も熟成も瓶詰めも自分でやりたいんじゃ~。本当の意味で自分が作ったビールやワインが飲みたいんじゃ~。」

 

そういう気持ちは凄く分かります。ですが日本の法律では現状無理です。

そう、日本では・・・ね?

 

つまり・・・自家醸造が認められている国に行けば、いくらでもビールでもワインでも作ることが出来るのです!

 

なんと実は、ほとんどの先進国では自家醸造が合法だったりします。

【homebrewing supplies】と検索すれば、自家醸造の道具がいくらでも出てきます。なんて羨ましい環境なんだ・・・。

 

ただ当たり前ですが、一番のネックは「作業場所と発酵場所の確保」と「仕込む日と発酵終了して瓶詰めする日」に現地にいないといけないことです。

たまたま「海外転勤になってお酒を造れるぞ!」とかなったらラッキーですが、まあ難しいですよね。

これに関しては本当に最終手段です。

 

ここまでは「自家醸造」についての話でしたが、「自家蒸留」に関しては合法な国はかなり少なくなります。

ホームブルーイング大国アメリカでも、自家蒸留は認められていません。(合法化の動きはあるみたいですが・・・)

英語版ウィキペディアの「Moonshine by country」のページを見る限り、先進国の中で自家蒸留が認められてるのはロシア・ニュージーランドくらいでしょう。

 

蒸留がここまで厳しく制限されている国がなんで多いのかというと、単純に危険だからです。

素人が知識なく自家蒸留をすると、メタノール中毒で死ぬ危険性があります。

 

もし仮に「ロシアやニュージーランドに行って蒸留酒をつくるぞ!」ってなっても、ほんと自己責任でお願いします。

マジ危険。

 

 

EX「大きな声では言えない話」

 

ここまで「一部例外を除いて、日本でお酒を作っちゃダメだよ!」という話をしてきました。

ですが、実は日本でも自家醸造の道具は購入できたりします。

東〇ハンズとかでも、自家製ビールキットなるものが普通に売っていたりして結構ビビります。

 

しかしそういった製品には、必ずこういった注意書きがあります。

「日本国内ではアルコール度数1%以上の酒類を製造することは認められていません」・・・と。

ですが一緒に添付されているビールのレシピ通りに作ると、普通のビールのアルコール度数になります。

 

一体どうしろと!?

もちろん、「これくらい希釈すると1%より下になります」みたいなことも書かれていますが、「じゃあそっちのレシピを書けよ!」と思わずにはいられません。

というかわざわざ薄いビールを自分で作って飲むとか拷問以外何物でもないような。。。

 

まあね、何が言いたいかというと、

「表に出てこないだけで密造してる連中は少なからず絶対にいるよね?」ということです。

 

そもそも、お酒なんてのは簡単にできるものなんです。ほんとに。

言ってしまえば、手搾りのジュースをほったらかしにしてたら、勝手にお酒になります。

 

それに、パン作りでつかうような「天然酵母」も立派なアルコール発酵だったりします。

天然酵母に関しては、製パン用なので酒税法の適用外になるのですが、果実酒と作り方はほとんど同じなんですよね・・・。

 

特別な材料とかも必要ありませんし、ぶっちゃけ密造してもバレにくいのが現状です。

 

無論、ここではお酒の密造を推奨するわけではありませんし、僕自身も法改正しない限り自家醸造する気はありません。

ですが現実問題として、これは紛れもない事実だと思います。

まあ、「とっとと他の先進国見習って、自家醸造OKにしろよ」とかは普通に思ってますけれども。笑

 

欧米諸国の新しいブルワリーなんかも、もとは自家醸造家だったという人もかなり多かったりします。

なので、現日本でも法改正すれば酒類業界ももっと盛り上がるのは間違いないハズ。

 

というか、業界全体が賑わったらお酒の購買が増えるんじゃない?

自家醸造までするような人間が、自分で作った酒だけで満足するわけないし。

そしたら結果的に国の税収も増えるんじゃない?

国にとっても酒作りたい人間にとっても、お互い良いことづくめじゃない?

じゃない?

 

・・・もし、このページを見ている貴方が国の偉い人だったら、ぜひ一度考えてみてもらえると嬉しいです。

 

 

まとめ

 

というわけでまとめです。

 

お酒を作りたい!自分で作れる?
日本では酒税法により、無免許でお酒を作ることは出来ません。
ただし梅酒などの「アルコール分20度以上の酒に漬けこんだリキュール」であれば、自分で消費する分には作って大丈夫です。
ホワイトリカーにぶどうを漬け込んで「疑似ワイン」を作りたいけど大丈夫?
20度以上のアルコール飲料であっても、ぶどうを漬け込むことは禁止されています。
他にも米や麦といった一部の穀物類、規定された食品添加物も入れてはいけない決まりとなっています。
自分で作った梅酒を友達にあげたいんだけど問題ない?
家族や友人などへのお裾分けは「自家消費」になるので問題ありません。
ただ販売することは禁止されているので注意してください。
・・・あの、もしかしてサングリアを作るのって違法?
正解。
ビールとかワインとか作りたいんだけど、どうしても無理なの?
一部体験という形でよければ、酒造体験がオススメ。
主催している各メーカーや酒蔵に問い合わせてください。
酒造体験とか甘え。一から酒を作らなければ酒造りとは言わないだろう?
日本ではどうしようもないので、海外にでも行ってお酒を作ればいいと思います。
正直さ、酒作ってもバレなくね?
密造酒。ダメ。ゼッタイ
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